会議に呼ばれなくなった、仕事を回してもらえない、意見を求められない。「自分は干されている」と感じ始めると、出社のたびに消耗して「もう辞めたい」という気持ちが膨らみます。

先に結論をお伝えすると、この状態で最初にやるべきは退職届を書くことでも、我慢を続けることでもなく、状況を「事実・原因・選択肢」の3つに分解して紙に書き出すことです。感情がいちばん強いときに出した結論は、辞めるにしても残るにしても後悔が残りやすいからです。この記事はその分解の手順を順に説明します。なお、最終的な判断はあなた自身の状況(家計・家族・健康など)を踏まえて行うものです。

ステップ1: 「干されている」を事実に分解する

「干された」は解釈であって、事実ではありません。まず、解釈を外して起きたことだけを書き出します。

  • いつから: 変化に気づいたおおよその時期
  • 何が変わったか: 「担当案件が3件から0件になった」「定例会議の招集から外れた」のように、数や出来事で書ける形にする
  • 誰との間で: 上司か、同僚か、部署全体か

ここで大事なのは、日付とセットで記録を残すことです。後で誰かに相談するときも、異動や退職の話し合いになったときも、「つらかった」という感情より「◯月から担当を外された」という記録のほうが状況を正確に伝えられます。

ちなみに、能力とかけ離れた程度の低い仕事しか与えないことは、厚生労働省(あかるい職場応援団)「パワーハラスメントとは」で解説されている職場のパワーハラスメント6類型のうち「過小な要求」型に当たり得るとされています(執筆時点)。ただし該当するかどうかは個別の状況によって判断されるものなので、この記事で「あなたのケースはパワハラです」と言うことはできません。当てはまりそうだと感じたら、後述の公的窓口で状況ごと相談してみてください。

ステップ2: 「辞めたい」の中身を切り分ける

次に、辞めたい気持ちの正体を確かめます。同じ「干されて辞めたい」でも、中身は人によって違います。

  • 仕事を取り上げられたこと自体がつらいのか(裁量・出番の喪失)
  • 評価されていないと感じることがつらいのか(承認の喪失)
  • 職場に居場所がないと感じることがつらいのか(関係の喪失)

どれが中心かで、取るべき選択肢が変わります。裁量の喪失が中心なら異動や転職で環境を変える効果が大きく、関係の喪失が中心なら部署が変わるだけで解消することもあります。

自分がどのタイプかを言葉にする補助線として、数秘術の考え方を使うこともできます。たとえばライフパスナンバー1や8の人は、自分で決めて動ける範囲や、責任と評価の釣り合いを重視する傾向が出やすいため、「干される=裁量と出番の喪失」が特に堪えやすいという仮説が立てられます。6の人は、貢献しても評価されない状態で不満が溜まりやすい傾向があるため、「認められていない」側がつらさの中心かもしれません。自分のナンバーが分からない場合は生年月日を入れるだけの無料診断で確認できます。これは「診断結果に従う」ためではなく、仮説として自分に問い直すための道具です。

ステップ3: 選択肢を並べてから決める

事実と気持ちの中心が言葉になったら、選択肢を並べます。多くの場合、選択肢は「我慢して残る」「今すぐ辞める」の2択ではありません。

  1. 社内で動く: 上司または上司の上司に、ステップ1の記録をもとに事実ベースで相談する。人事や社内相談窓口も含む
  2. 外部の公的窓口に相談する: 各都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせを含む労働問題の相談を労働者側から無料・予約不要で受け付けています
  3. 環境を変える準備を始める: 在職のまま転職活動や社内異動の希望を出す
  4. 退職する: 決めた場合も、できれば次の当てや生活費の見通しを付けてから

順番に意味があります。1と2は在職のままできて、失うものがほとんどありません。いきなり4に飛ぶ前に、1〜3で状況が動くかを確かめる価値があります。

心身が限界なら、辞め方の手段も知っておく

一方で、出社しようとすると体が動かない、眠れない日が続くなど心身に影響が出ているなら、話は別です。環境から離れることを優先してください。

自分で退職を切り出せる状態なら、直属の上司への申し出が基本です。それが難しい状態のときの手段として、退職代行というサービスがあります。運営主体によってできることが異なり、民間業者は勤務先への退職意思の伝達まで、弁護士は未払い残業代や有給消化といった交渉まで依頼できる区分です。たとえば弁護士法人ガイア法律事務所の退職代行は弁護士が対応する型のサービスで、LINEやメールで相談できます(執筆時点)。依頼するかどうかは別として、「いざとなればこういう手段がある」と知っておくだけでも、追い詰められ方が変わります。

今日できるのは「記録を1行書く」こと

干されている状況は、自分ひとりの力ではすぐに変えられないことが多いものです。それでも、今日できることはあります。ステップ1の記録を1行書くこと。それが、感情で決めずに済む土台になります。

記録を書いたら、1週間後に読み返してみてください。「事実は変わっていないか」「気持ちの中心はどこか」。その2つの問いに答えられる状態になっていれば、辞めるにしても残るにしても、自分で納得して決められます。